『獅子の魔女外伝』入稿&一部抜粋

サークル「第8装甲連隊」のC83冬コミ新刊、『獅子の魔女~外伝』を入稿しました!

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今回登場する新しいキャラクター紹介はこちらをご覧ください。

獅子の魔女シリーズの新作のタイトルは『熱砂の絆』。かなり波乱万丈な一日の出来事を書き綴っています。
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本文100ページで、あさりさんのイラストが20点。小説60ページ+40ページのイラスト、ショートマンガ、解説図など盛り沢山です。陸戦ウィッチ好きなら一見の価値はあると思いますのでどうかよろしくお願いします。
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小説+挿絵で総数80ページの『熱砂の絆』は兼光ダニエル真とあさりよしとおさんのコンビで、この他に高永浩平さん、Qさん、A士さん、飯沼俊規さん、野上武志さんType.90さん、紗汐冴さん、清水清さん、園田健一さん(順不同)にご参加頂けました。

C83冬コミ新刊『獅子の魔女~外伝』はサークル「第8装甲連隊」が販売します。コミケット三日目12/31、東6ホールのテ-32aです。あさりよしとおさんのサークル「新世界壮健社」と合体です。兼光もあさりさんも行く予定です。

当日、よろしくお願いします!

最後に一部サンプルを掲載しましょう。それではまた。

016-illo しばらくそのまま海で涼んだ後、三人は濯いだ服を手で絞ったりや空薬莢を転がして脱水するためにハンノーマのところまで戻った。
流石に裸のままでいるのに抵抗を感じたので、三人はそれぞれ服を一部身に纏った。正午近くになり、気温が日陰でも四五度を越えるような酷暑なので三人とも極めて軽装のままだ。
<略>
ウィッチは一般人に比べるとかなりの温度差に耐えられるが、気温もさることながら眩しさもかなり酷い。三人とも大きめ防暑帽を被っていた。
「ふう、大体終わったわね。後は戻ったら適当な真水で塩抜きしましょう」
キュンメルが額から汗を拭きながら脱いだ帽子で顔を仰ぐ。
「今日はかなり暑い…… ん?」
空に視線を移したベッカーが何か気付いた。
「どうしたのー?……あ!」
ベッカーの見つめる北方の空で、白い軌跡が複数走っているのにアルバーズも気付いた。高度が妙に低い。
キュンメルはハンノーマの装具箱から双眼鏡を即座に取り出すと、そのまま運転席上の天板に昇り、空を凝視する。北西のバルディアの方角から伸びてきた白い飛行機雲の正体は三人の航空ウィッチだった。
「三機編隊!恐らくブリタニアの航空ウィッチだわ…… かなり速度出してるわね……」
アルバーズが使い魔の力を借りて耳と尻尾を生やし、耳を済ませた。
「中隊長ドノ!あの、右、見てください!えと、南東の方です!」
キュンメルが三つの白い軌跡の先からそのまま南東の方角に双眼鏡を向ける。虚空の中を有象無象の黒い点々が迫ってくるのが見えた。
キュンメルは双眼鏡の焦点を操作して迫る機影を可能な限り鮮明にしようとする。彼女が機影を判別できた時、二キロ程離れたバルディアの方から空襲サイレンが届くのが聞こえた。
「ネウロイ接近! 爆撃型<ボルンハーン>が6に護衛型<ケリドーン改>が8!方位・北西、距離10キロ強!」
キュンメルが少し緊迫した声で宣言する。
「どうしましょう、大尉!?これから宿営地に……!」
双眼鏡を下ろし、ベッカーの問いに済まなそうに答えるキュンメル。
「今からでは間に合わないわ。それに地上を移動していると空からの攻撃を引き寄せることになるかもしれない」
「でもこんな何も無いところに居たら……」
双眼鏡を再び目に当て、キュンメルは二人の部下に肝の据わった口調で語り掛ける。
「今はあのブリタニアのウィッチたちを信じましょう。さ、いつでも動けるように準備して!」
「はいっ!」
元気よく返事すると二人は即座に作業に取り掛かった。二人が準備をしている間、キュンメルが双眼鏡を覗きながら二人のために実況中継を続けた。
「三機編隊は海面スレスレで迫っているわ。高度を稼ぐ時間が無いって判断したのかしら…… きっと下から不意打ちをするつもりね…… どうやらここよりかなり北で遭遇することになりそう」
「たいちょー!ストライカーはどうしますか?」
「そうね、一応出せるように周りの荷物を退かしておいて」
「はーい!」
「今、擦れ違った!三機が上昇を始めたわ。すごい…… あんな急な切り返しなのに綺麗な編隊を維持してる……」
黒い侵略者たちは自分たちに脅威が迫るのを気付いていないのか無視をしているのか不明だったが、彼らの機影にはまったく変化がなかった。頭上から照りつける太陽にかまわずキュンメルは微動もせず双眼鏡を構えて実況を続ける。
「ネウロイはまだ気付いていない…… ブリタニアのウィッチ<トミーガールズ>、依然急速上昇中…… 距離、200メートル…100メートル…ギリギリに迫ってる…… ウィッチが発砲!!一番後ろのボルンハーン一機に……着弾閃光!やった!爆発四散!」
作業を大方終えたベッカーとアルバーズがお互いの顔を見つめて喜ぶ。一方、キュンメルはこの戦いはこれからが大変だろう、と内心思った。ブリタニアのウィッチたちを気遣い、キュンメルの心臓の鼓動が早くなる。
ここにきてネウロイの群れも敵の迎撃に気付き、動きが変わる。爆撃型が速度を速めると同時に護衛型がバラけて狩人を狩り始めた。
「三機編隊、そのまま上昇継続!ケリドーン改を引き離すつもりかしら…… 違う!オーバーシュートを誘ってる!ブレイク!それぞれバレルロールを始めたわ……!」
多勢に無勢であるにも関わらず護衛型に対して猛烈な反撃を開始したブリタニアのウィッチたち。こんな不利な状況で散開するなど、自殺目的かよほどの熟練者しか考えられない。キュンメルは息を呑むように見つめる。いつの間にか彼女の足元に汗の水溜りが出来ていた。
「大尉、準備完了しました。いつでも動けます」
上着を着たベッカーが運転席に潜り込み、ハーフトラックのエンジンを掛けた。今すぐ動くつもりがなくても、これで即座に反応できるようなった。
「たいちょー。帽子してください。はーい」
いつの間にかプルオーバーのシャツを纏ったアルバーズがキュンメルの傍へとよじ登り、帽子を被せる。
「ありがとう、ベル。ベッカー!とりあえずゆっくりと反転して。いざという時は崖を昇るわ」
アルバーズに双眼鏡を渡すとキュンメルは運転席の後ろまで降りた。
「ベル!ちゃんと掴まってなさいよ!」
ベッカーからの掛け声に答えるようにアルバーズは腰をおろし、運転席の上に設置されている機関銃に片手を伸ばした。
「だいじょーぶ…きゃあ!」
「ほら、今言ったばかりじゃない」
そう嗜<たしな>めるベッカーにアルバーズは反論する。
「違うの!ブリタニアのウィッチが一人がネウロイに追いまわれて…… あー、もう!なんで他の人たちは助けに行かないの!」
荷台の降りたキュンメルは装具箱から双眼鏡をもう一つ取り出す。いつの間にか三人のブリタニアのウィッチはまた三機編隊に戻っていた。後ろから追跡するケリドーン改を振り払って、バルディアに向っているボルンハーンの後ろに喰らいつこうと全力で飛んでいる。護衛型ネウロイがウィッチたちを猛烈に追い上げ、容赦なく発砲を開始していた。
「あれは後ろのウィッチが先行する攻撃手を守っているのよ、ベル」
キュンメルが解説してもアルバーズの不安は一向に減らない。当たり前だ。後続の一人のウィッチはネウロイの攻撃をシールドで必死に凌いでいるが、明らかにすり減らされている。前衛の二人に比べてすこし速度が遅くなっているようだ。それでも三人は吸い込まれるように真っ直ぐバルディア上空へと突き進む。
どんな犠牲を払っても爆撃型ネウロイを墜とすつもりにちがいないとキュンメルは心の中で悟った。
バルディアへの爆弾投下を開始したボルンハーン。その後方から猛烈な勢いでブリタニアのウィッチが攻撃を始めた。一機、また一機と撃墜されていく。残った爆撃型は一機。
「行けー行けー!!」
アルバーズが興奮する。ハンノーマの反転を終えたベッカーも運転席でじっとしていられず、荷台へとやってきた。キュンメルの脇で立ち、遠方の壮絶な戦闘を硬い表情で見つめる。2キロ以上離れているにも関わらず、ベッカーは肉眼で過酷な戦いを判別できた。
双眼鏡に釘付けになっているキュンメル。本来、常人にはそんな遠方の光景などまともに判別できない。にも関わらずベッカーがすべてを見定めていたが、そのことをキュンメルは気付かなかった。
先行する二人のウィッチが残る爆撃型を追い抜くと、後ろから後衛のウィッチが追いついてきた。
「最後のもやっちゃ……!!」
アルバーズの陽気な掛け声がいきなりかき消される。
キュンメルも絶句した。
地上のバルディアから対空砲火が再開されて、こともあろうに後続のウィッチに着弾したのだ。
「あ、ああ……」
ベッカーが身震いを始めた。彼女は即座に状況を把握できてしまった。誤射だ。ウィッチが通過した直後に対空砲がネウロイを攻撃しようとしたら、同士討ちをしてしまったのだ。
何か古い記憶が呼び覚まされているようにベッカーの鼓動が早くなり、ハンノーマの機関銃に寄りかかる。
「大丈夫!まだ飛んでるわ、フリーデ。あのウィッチは大丈夫よ!」
キュンメルがベッカーに呼びかける。
「でも、なんか…ヨタヨタして… 後ろからネウロイが……!!」
アルバーズの声に不安が滲む。キュンメルも唾を飲み込んだ。
誤射されたウィッチは一端は高度を大きく下げたが、なんとか水平飛行を再開する。ヨロヨロしながらも方位を内陸へと変えた。後ろからケリドーン改が続くも、なんとか回避運動を続けて敵の攻撃をすり抜ける。
キュンメルがはっと気付いた。あのウィッチはこちらに向っていると。防暑帽を振り払うキュンメル。いつもの精悍な指揮官の声を取り戻し、金髪の魔女が号令を放つ。
「ベッカー、運転席に戻って!」
「え……?」
「カレーの悲劇を繰り返すつもり!?さっさと奮い立ちなさい!」
「は、はい!!」
「アルバーズ、そこから降りて!私たちの出番よ!」
「はい!!」
アルバーズが降りるとキュンメルはハンノーマの運転席上に取り付けられている機関銃を取り外す作業を始めた。
「アルバーズはMP40<サブマシンガン>を用意したら、ストライカーを装着して出撃準備!ベッカー、とりあえず崖の上の台地まで慎重に急いで」
キュンメルが機関銃を取り外して弾倉を取り付けた時、身のこなしが速いアルバーズは既にストライカーを装着して準備を済ませていた。不整地の上を運転しているにも関わらず、ベッカーは上手く運転してハンノーマを崖の上へと進める。
「アルバーズ!わたしがストライカーを装着している間にあのウィッチの挙動を克明に報告しなさい。わたしだけじゃなくてベッカーにもわかるようにね」
双眼鏡を渡しながらキュンメルはラブラドールの黒い耳と尻尾を生やしたアルバーズに言いつけた。
「いいわね!あなたが私たちの目と耳よ!」
「はーい!」
キュンメルがストライカーに脚を滑りこませ、頭と臀部から獅子の立派な耳と見事な尻尾を生やす。息を整え、キュンメルは機関銃のボルトを引いて実弾を薬室へと挿入した。
「航空ウィッチさん、フラフラしているけど、上手く攻撃を避けてます。あ、ヒドイ!!斜め右から違うネウロイが……!」
「方位は、アルバーズ!?方位と敵の数!!」
運転席からベッカーが怒鳴った。視察窓<クラッペ>が全て開放されているとはいえ、装甲に囲まれたベッカーの視界は非常に制限されている。前方と左右の極一部しか見えない。どこにどう運転するか、すべてアルバーズの言葉次第だ。ベッカーの大声にアルバーズは一瞬びくついたが、すぐに気を取り直して続けた。
「今、三時の方向!いや、二時半!私たちのちょっと前に向ってるの!えーと、敵の数は……」
そのまま細かくアルバーズが解説を続けている間、キュンメルは自身の準備を整え終える。腰に予備弾倉が取り付けられたベルトを纏い、背にスリングで機関銃を背負った獅子の魔女。二人の陸戦ウィッチが荷台で移動する度に、砂塵を立てて疾走するハンノーマの床が軋みサスペンションが沈む。
「ベッカー!あのウィッチと平行に!」
「任せてください!」
台地の上の広がる平らな荒野を三人を乗せたハーフトラックが大量の埃を撒き散らしながら突き進む。履帯が廻る音よりもエンジンの咆哮が遥かにうるさい。
「他のウィッチも気付いて援護に…… あ、煙!! 追われているウィッチのストライカーから煙が!」
互いにもつれるようにネウロイとウィッチが急速に低空で接近してきた。一方、急速に速度を落とす手負いの仲間から獰猛なネウロイを引き離そうと、二人の僚機が果敢に攻撃する。ケリドーン改を三機撃ち落したところで、二人のブリタニアのウィッチは仲間を追い抜いて<オーバーシュート>しまい、態勢を整え直そうと上昇した。地表スレスレで飛ぶ傷付いたウィッチを仕留めようと二機のネウロイが左右から迫る。
「ベッカー、速度・方位をこのまま!私たちは出ます。あなたは出来る範囲で追いついてね」
「はい!」
ボルトを引いてMP40の薬室に弾丸を挿入するアルバーズにキュンメルが振り向く。13歳のラブラドールの魔女は自分の隊長の視線に笑顔で答えるが、やや表情が硬い。緊張しているのが明らかだ。
「怖い?」
「え…あの、ちょ、ちょっとだけ……」
キュンメルの問いにアルバーズは苦笑いをする。
「私もよ。でもあのウィッチはもっと怖いはず。がんばりましょう!」
キュンメルの言葉にアルバーズの胸に響く。
「はい!がんばります!」
「トラックダッシュ用意!ローリングランディング<走行着地>よ!一、二、三で飛び出します!」
ベッカーはハンドルを絶えず微調整して車体がなるべく左右にぶれないようにしている。
「大尉、どうぞ!!」
アルバーズとキュンメルがハンノーマの左右の補強された手すりに手を掛けた。
「一!二!三!!」
獅子の魔女と猟犬の魔女が宙に浮いた。
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