ユーロと戦後の清算

英エコノミストを読んでいたらポーランド外相がドイツにEUをもっと牽引しろと言い出すとは、本当に戦後は終わったと痛感した。現在のユーロの信用不安についてポーランド外相がドイツ政府にリーダーシップを発揮して欲しいと強く働きかけている記事が英エコノミストで紹介されていたのだ

ユーロ信用問題の解決策としてよく持ち上がるのは:
1)ユーロを 解体する
2)ユーロ加盟国家を減らす、または第一級ユーロ圏と第二級ユーロ圏と分ける
3)ユーロ参加国の財政を立て直す資金援助(個別援助)
4)ユーロ参加国の国債信用問題に対処する為に銀行の援 助保険機構を強化
5)ユーロ国債で個別国債を吸収する
6)ユーロ国債への移行と共に連邦化を推進する
大体この六つだ。

どれか一つというのは少なく、複数の組み合わせが論じられているが、どの解決策にしてもドイツのユーロでの経済的地位がもっとも大きいので、ドイツの決断が重要になる。

ユーロ解体望んでいる人は意外と少なく、とりあえず何とか緩い連盟を続けてお互いの長所短所を上手く補えるような経済を望み、それを可能とするユーロを手離したくないのが大勢を占めるのだが、ユーロの信用不安はこの「緩さ」に起因している。

統一貨幣であるユーロを維持するには加盟国は金利政策を大よそまとめなければいけない。金利が極端にばらつくとそこに資金がそこに集中する。ギリシャにお金が集中したのはその所為だ。そもそも金利は政府が制御できる物ではない。貨幣供給量(市中で出回っているお金の総量)を変更したり、中央銀行から民間銀行への資金貸付の金利を操作したり、財政赤字・黒字の動向で左右される物だ。

つまりそもそもギリシャは金利を高く操作した わけではない。財政赤字が長らく続き、国家の累積債務がかさんでいるので金利(国籍の利回り)を高く設定しないと政府支出の為に準備する財源が確保できなくなったのだ。こう言った場合、金利をコントロールするにはどうすれ ばいいか?財政赤字を減らすか、貨幣供給量を弄るか、自国の貨幣の価値を下げるかのいずれかだ。

しかしギリシャはユーロに参加している ので、貨幣供給量を変えられない。自国貨幣の価値を下げられないのだ。もっとも下げたら下げたでさらに金利を上げないと資金が集まらないようにある可能性があるが、それはまた別の話。逆にユーロ圏内の他の国の銀行はギリシャの金利の高さが凄い旨味だ。同じユーロなのに自国の国債や銀行よりはるかによい利回りを提供してくれるのだから。だからギリシャが維持できない位のレベルの財政赤字に陥っても貸付を続けたのだ。

ドイツもフランスもこの状態がこのまま 続くと危険だとわかっていたが、信用がぐらつく事で得もしていた。ユーロの価値が下がると輸出しやすくなるのだ。さらにユーロの理念で は各国の平等性が強く謳われてる。列強時代まで続いた帝国主義で小国が抑圧されるのを防ぎたい理念が今尚尊ばれている。

この歴史の負の遺産がドイツとフランス に対して大きなブレーキとなっている。本来ならば税制が揺らぎ始めたらもっと率先して対処すべきだったが、金利・財政政策の統合を推し進めると大国の論 理を一方的に小国に押し付けるような結果になりかねない。だから内外から反発があったのだ。

しかし結局ユーロの恩恵を享受しつつ、それに参加するのに必要な金利・財政政策の管理をするという責任から大国も小国も甘えてしまった。経済が弱まった時は特に財政支出が増えるのが当たり前だ。これ自体はどうしょうもない。逆に「財源である税収が減ったから支出も減らせ」とやってしまうと負の緊縮連鎖が始めり、大恐慌のような事態へと繋がる。本来ならば国家というのは民間が揺らいだ時に支えるような縁の下の力持ちであり、普段はその存在が目立つ(金利が突出していない)のが望ましい。ところがユーロではギリシャ国債が異常に目立っており、それに様々な民間銀行が過剰に投資したのだ。そんな時にリーマンショック以降で世界中に信用危機が発生して、みんな過剰投資を引き揚げて、緊縮路線にへと走り出す。リーマンショックからギリシャ国債不安へと繋がるのに時間が掛かったのはその間にユーロの枠組みでギリシャの問題を解決できなかったからとも言えるだろう。

つまりユーロの土台は設立当初から不備 や不安があったが、色々な理由からその脆弱さは最近のユーロ信用不安まで顕著にならなかった。ポーランド外相の言っているのは、ならばその根幹から直そう ということだ。それを成し遂げるにはドイツにリーダーシップを発揮して欲しいと。

ポーランドはユーロ参加することで様々 な恩恵を享受した。最大の恩恵は貿易と資金確保が楽になったのだ。ポーランドのように長期間に渡って計画経済を続けてきた国にとって設備投資する 為の資金の確保がとても大変である。日本も設備投資の資金源を廻って紆余曲折があった。郵便貯金はその名残の一つである。しかしポーランドの場合、ユーロへの参加で資金確保がより容易になったのが幸いした。

しかしポーランドもユーロに参加する 上で財政政策の独立性に対して大きく制限が課せられた。リトアニアとの共同国家が崩壊した19世紀初頭から20世紀末まで、ポーランドは主権を奪われ たり、大きく制限された時期がほとんどであり、冷戦から抜け出た時に自由と独立を取り戻せたのを大変喜んだ。その歴史からポーランドでは独立性を守りたい気構えが今尚とても強い。

それでもなお、ポーランド外相ははっきり言ったのだ:「今ポーランドが恐れているのは、ドイツの行動よりも、ドイツが行動しないことだ」

具体的にはユーロ圏内の信用を取り返す為に大国であるドイツの主導でより統合された連邦制度を構築し、各国は国家アイデンティティ、文化、宗教、生活様式、公共倫理、所得税と法人税とVATを廻る自己決定権以外はこの連邦共同体の中で模索すべきだ、という発言へと繋がっている。ユーロ条約の改定を呼びかけているのだ。

「ドイツは独占せずに先導せよ。さすらばポーランドはドイツを支援する」

シコルスキー外相のこの文句を読んだ時、世界は確実に第二次世界大戦から大事な教訓を学び前進しようとしていると私は感じた。ユーロ問題が上手く解決される事を心より祈る。

This entry was posted in Japanese, news. Bookmark the permalink.

While I may not be able to respond to all comments, I always welcome feedback. Thank you.

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s